東京高等裁判所 昭和30年(う)3641号 判決
被告人 浜本政吉
〔抄 録〕
控訴趣意第一点について。
よつて考察するに、他人に対し権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内でありかつその手段方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えないかぎり、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるものと解するを相当とする(最高裁判所第二小法廷昭和三〇年一〇月一四日判決判例集九巻一一号二一七三頁参照)。しかして原判決挙示の証拠によれば原判示第一、二の各事実は優にこれを認めることができ、被告人が原判示秋元栄三、長堀信雄に対し、手形金支払請求及び債権取立のためにとつた手段としての原判示各所為は、権利行使の手段としては、明らかに社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱しているものと認められるので、その各所為につき恐喝罪が成立することは明らかであつて、所論の如く正当な権利の行使に伴う行為であるとか、或は脅迫罪のみが成立するに過ぎないということはできない(同裁判所第二小法廷昭和二七年三月七日判決判例集六巻三号四五〇頁参照)。原審における証人竹内八郎、同桝山龜五郎、同沼田高三の各供述記載中右認定に反する部分はいずれも措信し難く、その他記録に徴するも原判決が採証及び事実認定において条理、実験則に反し、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認を冒したものと認めるに足りる証拠はない。要するに、原判示第一、第二事実の認定は正当であつて、所論は採用の限りではない。
(三宅 河原 遠藤)